附属学校を置く各国立大学法人学長 殿
各都道府県知事 殿
各都道府県教育委員会 殿
文部科学省スポーツ・青少年局長 山中 伸一
学校給食衛生管理基準の施行について(通知)
学校給食における衛生管理の徹底については、かねてから格別の御配慮をお願いしているところですが、このたび、学校保健法等の一部を改正する法律(平成20年法律第73号)により改正された学校給食法(昭和29年法律第160号。以下「法」という。)第9条第1項の規定に基づき、別紙1(下記参照)のとおり、「学校給食衛生管理基準」(平成21年文部科学省告示第64号。以下「本基準」という。)が平成21年3月31日に公布され、平成21年4月1日から施行されました。
本基準の概要等については、下記のとおりですので、法第9条の趣旨を踏まえ、本基準に照らした適切な学校給食の衛生管理につき遺漏のないよう願います。
なお、各都道府県教育委員会におかれては、域内の市町村教育委員会及び所管の学校に対して、各都道府県知事におかれては、所轄の学校及び学校法人等に対して、国立大学法人学長におかれては、その管下の学校に対して周知を図るとともに、適切な対応が図られるよう配慮願います。
記
本基準の概要
- 総則
法の趣旨を踏まえた学校給食を実施する教育委員会等の責務を定めたこと。 - 学校給食施設及び設備の整備及び管理に係る衛生管理基準
学校給食施設、学校給食設備並びに学校給食施設及び設備の衛生管理に関する基準を定めたこと。また、当該基準について定期的に検査を行うこととしたこと。 - 調理の過程等における衛生管理に係る衛生管理基準
献立作成、学校給食用食品の購入、食品の検収・保管等、調理過程、配送及び配食並びに検食及び保存食等に関する基準を定めたこと。また、当該基準について定期的に検査を行うこととしたこと。 - 衛生管理体制に係る衛生管理基準
衛生管理体制、学校給食従事者の衛生管理、学校給食従事者の健康管理及び食中毒の集団発生の際の措置に関する基準を定めたこと。また、食中毒の集団発生の際の措置を除き当該基準について定期的に検査を行うこととしたこと。 - 日常及び臨時の衛生検査
日常及び臨時の衛生検査を行うべき項目等を定めたこと。 - 雑則
記録の保存期限等を定めたこと。
留意事項
- 総則的事項
- 法の趣旨の徹底について
法の第9条2項及び第3項において、学校給食を実施する義務教育諸学校の設置者は、本基準に照らして適切な衛生管理に努めるとともに、義務教育諸学校の校長又は共同調理場の長は、本基準に照らし、衛生管理上適正を欠く事項があると認めた場合には、遅滞なく、その改善のために必要な措置を講じ、又は当該措置を講ずることができないときは、当該義務教育諸学校若しくは共同調理場の設置者に対し、その旨を申し出ることとされており、法の規定に基づき、学校給食の衛生管理の充実に努められたいこと。(法第9条第2項及び第3項) - 本基準の策定について
本基準は、「学校給食衛生管理の基準」(平成9年文部省体育局長通知。以下「旧基準」という。)の内容を踏まえ、策定されたこと。
- 法の趣旨の徹底について
- 個別的事項
旧基準からの主な変更点及び個別的に留意すべき点は、以下のとおりである。- 総則
(主な変更点)
学校給食の衛生管理は、「HACCPの考え方」に基づくとともに、「調理等の委託を行う場合」も本基準の対象となることを明記したこと。 - 第2 学校給食施設及び設備の整備及び管理に係る衛生管理基準
- 総則
- (1)学校給食施設
(主な変更点)- 別添の「学校給食施設の区分」について、「汚染作業区域」、「非汚染作業区域」及び「その他の区域」等区域の整理をし、その他に「前室」を加えることとしたこと。
- ドライシステムについて、「導入するよう努めること」、またウェットシステムについては「ドライ運用を図る」ことを明記したこと。
- 学校給食従事者専用の便所について、「調理衣の着脱場所」を「便所の個室の前」に設けるよう努めることとしたこと。
(留意事項)- 本基準において、「洗浄室」については、午前中は非汚染作業区域、午後の洗浄開始時から清掃終了時までを汚染作業区域として整理するとともに、「食品を取り扱う場所」については、作業区域より洗浄室を除いた施設として整理していること。
- 汚染作業区域と非汚染作業区域の境には、カウンター等を設けるなど、食品のみが移動するよう工夫すること。
- (2)学校給食設備
(主な変更点)- シンクについて、「下処理室」においては、加熱調理用食品、非加熱調理用食品及び器具の洗浄に用いるシンクを別々に設置し三槽式構造とすること、また、「調理室」においては、食品及び器具等の洗浄用シンクを設置し、共用しないことを明記したこと。
- 冷蔵及び冷凍設備について、「原材料用及び調理用等」に整備するとしたこと。
- 学校給食従事者の専用手洗い設備について、「前室、便所の個室に」設置するとしたこと。
- 学校給食従事者の専用手洗い設備の給水栓について、「温水に対応した方式」としたこと。
- (3)学校給食施設及び設備の衛生管理
(主な変更点)- ねずみ及び衛生害虫について、発生状況を1ヶ月に1回以上点検するとともに、「発生を確認したときには、その都度駆除をすることとし、必要な場合には、補修、整理整頓、清掃、清拭、消毒等」を行うこととしたこと。また、「殺そ剤又は殺虫剤を使用する場合は、食品を汚染しないようその取扱いに十分注意すること」としたこと。
- 学校給食従事者専用の便所について、「定期的に清掃及び消毒を行うこと」としたこと。
- 学校給食従事者専用の手洗い設備について、「石けん液、消毒用アルコール及びペーパータオル等」衛生器具を常備すること、また、「前室の手洗い設備には個人用爪ブラシ」を常備することと整理したこと。
- 清掃用具について、「汚染作業区域と非汚染作業区域の共用を避けること」としたこと。
(留意事項) - 学校給食従事者専用の便所については、他の大量調理施設と異なり学校給食従事者のみが使用することから、ノロウイルス等の感染が拡大する恐れがある場合等を除き、調理終了後に清掃及び消毒を行うことが望ましい。
- 第3 調理の過程等における衛生管理に係る衛生管理基準
- (3)食品の検収・保管等
(主な変更点)- ダンボールについて、「食品の保管室」に持ち込まないことを明記したこと。
(留意事項) - 栄養教諭等を検収責任者としない場合には、学校給食調理員等を検収責任者として定めること。
- 泥つきの根菜類の処理については、球根皮むき機とあわせ、球根以外に対応した泥落としシンクの整備に努めることが望ましい。
- ダンボールについて、「食品の保管室」に持ち込まないことを明記したこと。
- (4)調理過程
(主な変更点)- 加熱処理する食品について、「中心部が75℃で1分間以上(二枚貝等ノロウイルス汚染のおそれのある食品の場合は85℃で1分間以上加熱すること)」としたこと。
- 和えもの、サラダ等について、和え終わるなど「調理終了時」にも温度と時間を記録することを明記したこと。
- エプロン、履物等について「作業区分ごとに洗浄及び消毒」することを明記したこと。
- 食品の配送時の温度の変化を把握するため、共同調理場において、調理場搬出時及び受配校搬入時の時間の記録について、引き続き毎日記録することとするが、温度については、月毎に行うなど「定期的」に記録するとしたこと。
(留意事項) - 調理時においても食品中の異物混入及び調理中の異物混入に注意すること。
- 使用水の安全確保について、調理終了後に遊離残留塩素の状態を確認することとしているが、原則として、調理作業が終了した午前中の時間に確認すること。
- (5)配送及び配食
(主な変更点)- 家庭から持参させる食器具について、食育の観点からはし等を持参することが想定されることから、その観点から整理したこと。
- ノロウイルス等における嘔吐物について適切に対処するため、「児童生徒の嘔吐物のため汚れた食器具の消毒を行うなど衛生的に処理」することとしたこと。また、嘔吐物が付着した食器具の返却については、次亜塩素酸ナトリウム液(塩素濃度、200ppm)に十分浸すなどの消毒を行うことなどにより「調理室に返却するに当たっては、その旨を明示し、その食器具を返却すること。また、嘔吐物は、調理室には返却しないこと」としたこと。
- 第4 衛生管理体制に係る衛生管理基準
- 1.(1)衛生管理体制
(主な変更点)- 研修について、教育委員会等は「新規採用時及び経験年数に応じた研修その他の研修の機会が確保されるよう努めること。」及び「学校給食調理員を対象とした研修の機会が確保されるよう努めること。」としたこと。
- 食品の点検については、旧基準では、都道府県教育委員会と市町村教育委員会との役割が明確でなかったことから、本基準においては、市町村教育委員会が、「定期的に原材料及び加工食品について、微生物検査、理化学検査を行うこと。」と整理したこと。また、定期的な点検の実施に当たっては、市町村教育委員会においては、いずれかの学校で1年間に少なくとも1校は実施すること。なお、都道府県教育委員会においては、市町村教育委員会と連携を図り、その点検結果を県内に周知するなど適切な情報共有を図ることが望ましい。
- 調理室の施錠について「調理作業後の調理室等は施錠するなど適切な管理を行うこと」としたこと。 [#s995d403]
(留意事項) - 学校給食調理員の研修プログラムについては、別紙2「学校給食調理員の標準的研修プログラム」(下記参照)を参考とし、各教育委員会等で研修計画を作成し、実施すること。
- 学校給食従事者の健康管理
(主な変更点)- 学校給食従事者の健康診断について、年1回健康診断を行うとともに、その他2回定期に健康状態を把握することが望ましいとしたこと。
- 検便については、長期休業中も含め「毎月2回以上」行うことを明記したこと。
- ノロウイルスについて、「ノロウイルスを原因とする感染性疾患による症状と診断された学校給食従事者は、高感度の検便検査においてノロウイルスを保有していないことが確認されるまでの間、食品に直接触れる調理作業を控えさせるなど適切な処置をとること」としたこと。また、「ノロウイルスにより発症した学校給食従事者と一緒に食事を喫食する、又は、ノロウイルスによる発症者が家族にいるなど、同一の感染機会があった可能性がある調理従事者について速やかに高感度の検便検査を実施し、検査の結果ノロウイルスを保有していないことが確認されるまでの間、調理に直接従事することを控えさせる等の手段を講じるよう努めること。」としたこと。
(留意事項) - 地域の感染症の状況等を勘案し、ノロウイルス等についても、必要に応じて検便を行うこと。
- 配送及び配膳に携わる者についても、その作業内容に応じて、健康管理等を行うべきこと。
- (4)食中毒の集団発生の際の措置
- 食中毒の集団発生の際の対応として「二次感染の防止に努めること」と明記したこと。
- 食中毒の集団発生時の措置として「学校医及び保健所等と相談の上、医療機関を受診させるとともに、給食の停止、当該児童生徒の出席停止及び必要に応じて臨時休業、消毒その他の事後措置の計画を立て、これに基づいて食中毒の拡大防止の措置を講じること」と明記したこと。
- 食中毒の集団発生時の関係職員の役割について、「校長の指導のもと養護教諭等が児童生徒の症状の把握に努める等」を明記したこと。
- 食中毒の発生原因の解明に当たって、「保健所等に協力」することを明記したこと。
- 第6 雑則
- 本基準に基づく記録は、全て「1年間保存する」ことを明記したこと。
- その他
- 定期及び日常の衛生検査の点検票
別紙3(下記参照)の別添1~8票(新たに定めた、「調理過程の定期検査票」(別添第4票)を含む。)を参考とし、各学校等で適切な点検票を作成し、実施すること。 - 児童生徒に対する保健教育・衛生指導
- 児童生徒に対しては、感染症・食中毒の予防についての保健教育を強化するとともに、日常生活において、感染症・食中毒の予防のために必要な生活の実践、特に用便後、食事前等の手洗いを励行させるよう指導すること。
- 児童生徒に対して、給食前に十分手を洗わせること。手洗いは、必ず流水式とすること。
- 患者の早期発見
- 児童生徒等の欠席率に注意し、感染症・食中毒等の早期発見に努めること。
- 児童生徒等に対して、健康観察その他によって健康の異常の発見に努め、感染症・食中毒のような疑わしい症状のある児童生徒等があるときは、関係機関の協力を得るとともに、速やかに学校医又は医師の診断を受けさせ、その指導により必要な措置を講じること。
- 健康に異常のある児童生徒等は、自主的に保護者、教員等に申し出るように指導し、また、保護者に対しては、児童生徒等が感染症・食中毒にかかったり、その疑いがある場合には、学校にその旨を報告するよう指導すること。
- 保健所等から情報提供を受け、地域における感染症・食中毒患者の発生及び流行状況に注意し、早期にその症状を把握するよう努めること。
- 定期及び日常の衛生検査の点検票
- 文部科学省への報告 [#fca26e13]
- 都道府県教育委員会及び都道府県知事は、域内の学校に感染症・食中毒やその他学校給食による健康被害の集団的発生又はそのおそれがある場合には、別紙4‐1「学校(共同調理場)における食中毒等発生状況報告」(下記参照)を、終えんした場合には、別紙4‐2「学校における感染症・食中毒等発生状況報告」(下記参照)により、速やかに文部科学省スポーツ・青少年局長に報告すること。
なお、感染症・食中毒等の発生後、その状況の軽重により、適宜中間報告をすること。 - 国立大学の附属学校に感染症・食中毒やその他学校給食による健康被害の集団的発生又はそのおそれがある場合には、様式4‐1「学校(共同調理場)における食中毒等発生状況報告」(下記参照)を、終えんした場合には、別紙4‐2「学校における感染症・食中毒等発生状況報告」(下記参照)により、速やかに文部科学省スポーツ・青少年局長に報告すること。
なお、感染症・食中毒等の発生後、その状況の軽重により、適宜中間報告をすること。 - ア及びイの報告に際しては、参考となる献立表等の資料を添付すること。
- 都道府県教育委員会及び都道府県知事は、域内の学校に感染症・食中毒やその他学校給食による健康被害の集団的発生又はそのおそれがある場合には、別紙4‐1「学校(共同調理場)における食中毒等発生状況報告」(下記参照)を、終えんした場合には、別紙4‐2「学校における感染症・食中毒等発生状況報告」(下記参照)により、速やかに文部科学省スポーツ・青少年局長に報告すること。
- 文部科学省資料等の活用 [#d5a14408]
学校給食関係者は、次の資料を活用すること。- ▷「学校給食調理場における手洗いマニュアル」(文部科学省スポーツ・青少年局学校健康教育課、平成20年3月)
- ▷「調理場における洗浄・消毒マニュアルPart1」(文部科学省スポーツ・青少年局学校健康教育課、平成21年3月)
- 「食に関する指導の手引」(文部科学省スポーツ・青少年局学校健康教育課、平成19年3月)
- 「学校給食における食中毒防止の手引」(独立行政法人日本スポーツ振興センター)
- 「学校給食 食中毒防止ビデオシリーズ」(独立行政法人日本スポーツ振興センター)
- 学校給食従事者の喫食について [#bf241ec2]
学校給食従事者が、施設内で調理された給食を喫食することは、自ら調理した給食を児童生徒とともに食べることによって、調理者としての責任を自覚し、給食内容の向上改善に資するものであることから、毎日の健康調査及び月2回以上の検便検査の措置を講じた上で、当該施設内で喫食しても差し支えない。