平成24年介護保険法改正による労働基準法のポイント
平成24年の介護保険法改正で、今までは適当にしていた労務管理も、労働基準法違反から「指定の取り消し、更新時の指定の拒否」ということが想定される以上、労働基準法を無視するわけにはいかなくなりました。平成24年4月に行われる介護保険法の改正案で以下のような文言が加えられることが決定的となりました。
平成24年の介護保険法の改正
六 介護サービス事業者の労働法規の遵守に関する事項
1. 都道府県知事又は市町村長は、次のいずれかに該当する者については、介護サービス事業者の指定等をしてはならないものとすること。(第七十条第二項、第七十八条に二第四項、第七十九条第二項、第八十六条第二項、第九十四条第三項、第百十五 条の二第二項、第百十五条の十二二項、第百十五条の二十二第二項関係)
(1) 労働に関する法律の規定であって政令で定めるものにより罰金刑に処せられ、その執行を終わるまでの者、又は執行を受けることがなくなるまでの者
(2) (二)労働保険の保険料の徴収等に関する法律により納付義務を負う保険料等の滞納処分を受け、引き続き滞納している者
2. 都道府県知事又は市町村長は、指定地域密着型サービス事業者が1.(1)に該当するに至った場合には、指定の取消し等を行なうことができることとすること(第七十七条第一項、第七十八条の十、第八十四条第一項、第九十二 条第一項、第百四条一項、第百十五条の九第一項、第百十五条の十九、第百十五条の二十九関係)
ざっくり要約しますと
労働基準法などの法律で罰金刑を受けたことがある事業所に関しては
◆事業所の指定を行わない
◆指定の取り消しを行う
◆指定の更新の許可を出さない
といった事があり得るという内容になっています。
指定の更新がなされない場合には当然に事業の継続ができなくなりますので、法違反がないかをこの機会にチェックされるのがいい機会なのではないかと思います。
労働基準監督署は最初にこう聞いてきます
労働基準監督署が事業場に来た時に何を問われるのでしょうか?もちろん事案、労基署が訪問するに至ったケースによって異なるわけですが、共通して要求されるものがあります。最低限、それらの資料はすぐに提出できるようになっておく必要があります。それは、
- 労働者名簿
- 出勤簿
- 賃金台帳
- 36協定
- 就業規則
- 健康診断の控え
他にもあげればいろいろ呈すつを求められると思いますが、これらはかなりの確率で要求されます。この、労働者名簿、出勤簿、賃金台帳は、法定3帳簿と呼ばれ、事業場に必ず備え付けなければならない帳簿のことを指します。
36協定は、時間外・休日労働協定による場合で、時間外労働がある場合に結ばなければならない協定です。
10人未満の事業場については就業規則の提出義務はないので、なければないで特に問題はないわけです。但し10人を超えますと当然提出を要求されます。
健康診断は、正社員については、雇い入れ時と毎年の健康診断が義務付けられております。近年の労災事故の深刻化と事故を未然に防ぎたい国の方針から厳しくチェックされることになります。
いかがでしょうか?これらの帳簿はそろっているでしょうか?あるとするならば、次に問題になってくるのは、正しい書式の帳簿がそろっているかどうかです。特に賃金台帳には法定記載事項がありまして、記載事項に不備がありますと、是正勧告が出やすくなる傾向があります。この賃金台帳の法定記載事項については以下に記載します。
賃金台帳の法定記載事項
賃金台帳には、次の項目が記載されている必要があります。これを法定記載事項と言います。
- 氏名
- 性別
- 賃金の計算期間
- 労働日数
- 労働時間数
- 時間外労働、休日労働、深夜労働を行った時間数
- 基本給、手当その他賃金の種類毎にその額
- 賃金の一部を控除した場合はその額
以上の項目は必ず記載しなければならない時効です。
全ての項目は重要で抜けることが許されないのですが、違反として重要視される項目はと聞かれることは、下記の三項目です。
- 労働日数
- 労働時間数
- 時間外労働、休日労働、深夜労働を行った時間数
何時から何時まで働いて、そのうち何時間が時間外労働で、深夜は何時間でしょうか?きちんと把握されることを要求されますのでご注意が必要です。
その他のポイント
その他ですが、事案に違って異なるので、絞るのは非常に難しいですが、まずは、労働時間管理です。職員の皆様は何時から何時まで働いて、日当たり、週当たり、月当たり、いったい何時間の時間外労働をしているのでしょうか?深夜労働はいかがでしょうか?労働時間管理が行われているかどうかがポイントです。
労働者からの申告で多いのが、【未払い残業代】です。きちんと給与を計算して支払っているでしょうか?「払ったら潰れる」悲痛な声も聞こえてきそうですが、あくまで社会保険料、労働保険料はおさめることを義務付けられていますから、「払いたくない」は当然通じません。最初のうちから必要経費としてとらえる必要があります。
現状診断
現状労基法をどの程度守れているのか 12の質問で分かる範囲でお答えください。不明な場合は、できていないの判断し、[No]にチェックを入れてください。
No | 質問 | Yes | No |
---|---|---|---|
1 | 法定3帳簿(労働者名簿、賃金台帳、出勤簿)が揃っている | ||
2 | 上記3帳簿を正しく運用している | ||
3 | 最低賃金を知り、その基準をクリアしている | ||
4 | 全ての従業員に労働条件通知書を作成して手渡している | ||
5 | 36協定を毎年提出している | ||
6 | 時間外労働、休日、深夜の手当を正しく計算し、支払っている | ||
7 | 月の時間外労働の合計が45時間を超えていない | ||
8 | 管理監督者の意味を正しく知っている | ||
9 | 健康診断は毎年受けている | ||
10 | 2年以内に改正している就業規則を作って従業員に周知している | ||
11 | アルバイトでも与えられる有給休暇の基準を知っている | ||
12 | 従業員とのコミュニケーションは密にとっている |
いかがでしたか?全ての設問に [Yes] と答えられたでしょうか?残念ながら この設問に一つでも [No] がある場合は、御社の状況は 赤(黄)信号 と言えます。今すぐ [No] の項目について見直されることをお勧めします。